ブログ 相続について 不動産について

マイホームと遺言書~家を購入したら考えること

「マイホームを購入したら遺言を書きましょう!」

そう言われたら、

「えっ?何で?マイホーム購入の夢が叶ったばかりなのに?亡くなったことを考えるなんて縁起でもない。」

そう思いますよね。その気持ちは分かります。

しかし、相続の手続きをしていると「この遺産の分け方でいいのかな?」「遺言書があったらな・・・」と思うケースがあります。

今回のブログでは、マイホームを購入した(比較的)若い人で、私が考える「遺言書があればよかったのに」のケースを書きます。購入後30年経って、住宅ローンも返済し終わった人は該当しません。

なお、今回のブログは私が仕事で経験した中で思ったことです。あくまで私の考えを書いたもので、違う意見もあります。

マイホーム購入者で遺言を書いた方がいい人は?

マイホームを購入した人で、私が思う「遺言を書いて欲しい人」は、

 ①未成年の子どもがいる。
 ②住宅ローンを組んでいる。
 ③預貯金もマイホームの購入者に集中している。

この人です。①~③すべてに当てはまったら、「もし今亡くなったらどうなる?」を一度考えてください。

では、なぜマイホームを購入したばかりの人に、遺言書を書くのを勧めるのか?
ですが、まず遺言書が無い場合の相続手続きを説明します。

遺言書がない場合の相続

遺言書が無い場合の相続財産は、相続人間で話し合って遺産を分ける「遺産分割協議」か、「法定相続分」(民法第900条)で分けるかの2択になります。

遺産分割協議

遺産分割協議は、相続人全員が話し合って、どの財産を誰が相続するかを決めます。決まったら遺産分割協議書を作成し、これに相続人全員が署名・押印します。

この遺産分割協議書を使って不動産の名義変更や預貯金の手続きをします。

遺産分割協議で注意する点は未成年者だけは、遺産分割協議が成立できないことです。
未成年の相続人がいる場合、親権者(親)が未成年の代理人として遺産分割協議をします。
そして、親権者自身も相続人である場合は、親権者とは別の未成年の特別代理人を家庭裁判所で選任する手続きが必要となります。

家庭裁判所で特別代理人が選任されないと、不動産の名義変更も預貯金の手続きもできません。

この特別代理人の手続きについては、以前のブログに書きました。

法定相続分

法定相続分で分ける場合は、法律(民法第900条)で決められた相続分で各相続人が相続します。

預貯金などは各相続人で分割するこができますが、不動産は分割できませんので、相続人全員の共有となります。各相続人の持分は法定相続分となります。

法定相続の場合は、遺産分割協議書のような書類を作ることはありませんが、相続の手続きは相続人全員で行います。
法定相続の場合は特別代理人の選任手続きは必要ありません。

では次に遺言書がある場合の相続です。

遺言書がある場合の相続

遺言書の内容のとおりに相続できます。相続人に未成年がいても、特別代理人を選任する必要はありません。

具体的に4人家族で相続手続きをご説明します。

4人家族でシュミレーション

家族は、会社員の夫(42才)、パート勤めの妻(40才)、長女(10才)、長男(8才)の4人で、突然夫が亡くなったケースでシュミレーションしてみます。
夫は遺言書を書いていて、内容は「資産はすべて妻に相続させる。妻は子どもが成人するまで生活費や学費をよろしく頼む。」です。遺言の文言はわかりやすい表現にかえてます。

資産はマイホームの土地と建物、そして銀行の貯金が夫名義で400万円ほど。
このマイホームは8年前に3000万円の住宅ローンを組んで購入したもので、団信(団体信用生命保険)にも加入してます。
死亡保険にも加入していて、死亡時の保険金額2000万円、受取人は妻です。

相続財産は預貯金や不動産などのプラスの資産と、住宅ローンの残債務などのマイナスの資産です。
なお、死亡保険金は相続財産ではありません。死亡時に妻(受取人)に保険金を支払うという保険会社との契約です。

夫が亡くなった場合、住宅ローンは団信で返済され、その後の生活費や教育費は預金400万円と2000万円の保険金、夫の遺族厚生年金と妻のパート代で賄う予定です。教育費まで含めるとちょっと少ないかもしれませんが、一応平均貯蓄額と平均の保険金額に近い額です。

では、夫が42才で死亡した時の、相続手続を説明します。

不動産(マイホーム)

団信に加入している場合は、住宅ローンの債務者の夫が死亡したら、その残債務は団信の保険金で完済されます。家族はそのままマイホームに住み続けることができます。

もし、団信に加入していないと、債務は妻と子どもが相続することになり、住宅ローンを支払い続けなければいません。3000万円を35年返済で住宅ローンを組んだとして、8年後だと元本は少ししか減ってないと思います。
金融機関には所有者が亡くなったことを必ず連絡してください。住宅ローンを組んだ時の契約書に、所有者が変更したときは通知する義務が書かれているはずです。

不動産の手続としては、相続登記(名義変更)と住宅ローンを完済したことによる抵当権の抹消手続きが必要になりまます。

預貯金

亡くなった人の銀行口座は凍結されるので、相続手続きをしないと引出しはできません。

遺言書がある場合の手続

遺言書があっても、それを銀行に持って行けばすぐに手続きができると思われるかもしれませんが、遺言書の形式によって違います。遺言書の形式は3つあります。
 ①自筆遺言書
 ②自筆遺言書を法務局で保管
 ③公正証書遺言
①自筆遺言書は全部自分で書いた遺言書ですが、これを相続手続きで使う場合、家庭裁判所で検認手続きが必要です。
②の自筆遺言書を法務局で保管は、自筆で書いた遺言を法務局で保管するものです。(令和2年から始まった制度です)
③の公正証書遺言は、公証役場で作成したものです。
②と③は家庭裁判所の検認手続きは不要です。亡くなった時の戸籍等を添付して、すぐ相続手続きができます。

夫が公正証書で遺言を残していたら、妻は遺言書と死亡時の戸籍があれば預金の引き出しはすぐにできます。
亡くなった後の手続きを考えると公正証書遺言が一番スムーズです。

遺言書がなく、遺産分割協議をした場合の手続

遺産分割協議をして相続手続きをする場合、家庭裁判所に長女と長男の特別代理人2人の選任申立てをします。特別代理人には、祖父母や妻・夫の兄弟姉妹にお願いすることが多いです。

申立ての時には、遺産分割協議書の案を提出します。家庭裁判所は、その遺産分割協議案の内容が、未成年者の不利益とならないか、特別代理人は未成年の利益を考えているかを確認して選任します。

例え、夫婦間で亡くなった後のことを話し合ていて、その内容で遺産分割をしたとしても、家庭裁判所が未成年に不利益な分け方と判断する可能性もあります。
亡くなった人の意思は、遺言書に残さないと実現されないかもしれません。

保険金

相続財産ではないので、いち早く保険会社に請求しましょう!亡くなったらすぐに保険会社に連絡してください。
保険金は受取人の銀行口座に入金されます。
亡くなった人の銀行口座は凍結されてしまうので、保険金を相続手続きが終わるまでの間の生活費として使われる方も多いです。

遺言書を書く時の注意点

遺言書の内容は、遺言者が自由に決めることができます。
しかし、子どもには遺留分があります。遺留分は請求しないと、その権利は発生しません。
シュミレーションの遺言の内容の「妻がすべて相続する」とは、子どもの利益を奪ってしまう側面もあることを忘れないでください。あくまで遺産分割だけで考えるとですが。
その後の生活を含めると、利益を奪ったわけではないことは分かるのですが・・・

もちろん遺言書の内容をどうするかは、その家族の資産状況(預貯金額、保険の有無、負債の有無等)で違いますし、家族構成によっても違ってきます。
まずは家族の間で、もし亡くなった場合の資産状況や、その後の収入などシュミレーションしてください。
どのような形が自分の家族にとってベストなのかを話しあってください。

そして、亡くなった後には相続手続きがあることも忘れないでください。

ご質問などありましたらお気軽にお問い合わせください。

代表の林潤(めぐみ)です。

身近にある法律問題や、高齢になって発生する問題などの不安・悩み・心配事に対し、依頼者と一緒に解決に向けて取り組んでいます。

「こんな事を相談してもいいのかな?」と迷うようなことでも、お気軽にご相談ください。相談者様の不安・悩み・心配事を解消し、笑顔になるお手伝いをさせて頂きます。

© 2021 愛実司法書士事務所